甲状腺機能亢進症
●甲状腺とは?
甲状腺ホルモン(T4、FT4など)を分泌し、全身のあらゆる組織に作用し、その新陳代謝・働きをつかさどります。ホルモンの量は間脳視床下部によって監視され、厳密にコントロールされており、甲状腺ホルモンの増減に伴って、脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌も増減します。健康な個体ではこれらのホルモンの分泌の波が正常な範囲内で維持されています。これらのホルモンのバランスが崩れると、様々な症状が引き起こされます。
●甲状腺機能亢進症とは?
甲状腺機能亢進症は猫での発生がほとんどです。甲状腺ホルモンの分泌量が増加してしまうことで様々な症状を引き起こします。典型的な症状は次のとおりです。
- 食欲増進
- 体重減少
- 興奮・過剰な吠え・攻撃行動
- 散瞳
- 呼吸困難(頻呼吸、開口呼吸)
- 多飲多尿
- 脱毛
- 嘔吐・下痢
7〜8歳の高齢猫の4〜5%、15歳以上の高齢猫で約9%が罹患していると言われています。その多くは甲状腺が腫瘍化することで起こります。
●診断方法は?
血液検査による甲状腺ホルモン(T4、FT4)および脳下垂体ホルモン(TSH)の測定が必要です。甲状腺ホルモン(T4、FT4)が高く、脳下垂体ホルモン(TSH)が低い(正常の場合もあります)場合、甲状腺機能亢進症の確定診断が下ります。ただし、腎臓病がある場合には甲状腺ホルモンの尿中への排泄により、数値が低く出てしまうことがあるため(偽陰性)、数値だけでなく尿検査などの他の検査や臨床症状も含め、総合的な判断が必要です。
●治療法は?
内服薬による内科的療法がメインとなります。薬の効き目には個体差があり、適切な薬用量を決定するために投薬開始後2週間後以降に再度甲状腺ホルモンの測定を行います。ホルモンの分泌量は病気の進行に伴い変化しますので、投与量の増量・減量を行うために定期的な甲状腺ホルモンの測定が必要です(通常6ヶ月毎)。
飲み薬が難しい猫ちゃんの場合にはヨウ素を制限した食事療法を行う場合もあります。甲状腺機能亢進症に陥った猫は高血圧であることが多いため、腎血流量が増加しており、腎臓病が隠されてしまうことがあります。そのため、治療開始後に隠れていた腎臓病が見つかることが多く、治療開始後は定期的な腎臓病のチェックも必要です。甲状腺腫瘍性甲状腺機能亢進症は外科的切除が適応となります。