猫の泌尿器症候群(FUS)
猫の泌尿器症候群(FUS)は、尿が出にくい、血液が混じる、回数が多いなどの状態を総称して付けられた病名です。適切に管理しないと50~70%は再発すると言われており、オス猫に多い病気のひとつです。
FUSを起こす病気には、「膀胱炎」・「尿道炎」・「尿道栓」あるいは「尿道結石症」があります。メス猫には少なく、オス猫に多い理由は、尿道が膀胱からペニスに向かうところで急に細くなる部分があるためです
FUSの要因
尿の酸性度
ネコの尿は通常「酸性」ですが、食後の数時間や尿路に細菌感染ある場合にも「アルカリ性」に変化します。
尿が「アルカリ性」になると、酸性の状態であれば溶けているミネラルが結晶します。これらの結晶は次第に固まって結石となる可能性があり、ネコの尿路で見られる結石の9割はマグネシウム・アンモニア・リン酸塩(ストルバイト)というものです。
尿の量・濃度と排尿回数
飲水量が少なくなると、尿の量も少なくなりトイレに行く回数も減り、尿の濃度は高まります。トイレに行く回数が少なくなると尿が「アルカリ性」へ傾き、結石ができやすくなります。
結石と食事の影響
尿結石は十分な量のミネラルがなければ作られません。そのため、マグネシウムを多く含んだ食事だと結石が形成されやすくなります。逆にマグネシウムが少ない食事であれば結石は形成されにくく、FUSの発症を予防することができます。
初期症状
- 突然いつもと違う場所で排尿を始める。
- 何回も排尿姿勢はするが少量の排尿あるいは全く尿が出ない。
- 尿に血液が混じり、強いアンモニア臭がする。
- 落ち着かない、食欲がおちる、水をしきりに飲む。
- ペニスを気にして、しきりに舐める。…などの症状が見られます。
後期症状
排尿ができない状態が続いたり、感染が激しいと「尿毒症」に陥ります。
尿毒症の症状が見られます。嘔吐・沈うつ・脱水・尿臭のする息などです。
お腹を触ると固くゴムまりのように膨らんだ膀胱が感じられます。ネコは痛がり、触られるのを嫌がります。
末期症状
- 排尿が全くできなくなります。
- 痙攣を起こすことがあります。
- 昏睡状態に陥ります。
治療
尿道につまっているものを取り除く処置をおこないます。
細いカテーテル(プラスチックの管)を挿入して洗い流します。カテーテルを何日かつけたままにしておくこともあります。このとき、猫がカテーテルを抜かないようにカラーを付けます。
カテーテルの挿入や洗浄ができない場合は、超音波を使って結石を粉砕してからカテーテルを挿入します。
それでも取り除けないときは、開腹して手術をすることになります。
治療後について
ほとんどの猫は回復しますが、来院時の猫の状態によって治療後が左右されます。
回復後は、飼い主さんが獣医師の指示を守って注意深く観察してくださっていれば、寿命を全うさせることが可能です。
しかし、残念なことでが、来院時の猫の状態によっては、あらゆる治療の努力にもかかわらず、命を救うことができないこともあります。早期発見・早期治療が大切です。
予防と管理
- トイレはいつも清潔にし、安心して排尿できる場所を作りましょう。
- 水は新鮮で、自由にいつでも飲めるようにしておきましょう。
- 決められた食事(処方食)を、決められた時間に与えましょう。
- 症状が改善されても、指示された薬は確実に飲ませましょう。
- 環境の変化・環境温度・精神的動揺など、ストレスとなる要因を、できるだけ抑えるようにしましょう。